アニメ『四月は君の嘘』に関わるスタッフのリレーインタビュー。
第14回目は原作の発売元である講談社ライツ事業の立石さん。
アニメ化の生みの親のひとりであり、
この作品を卵から孵化させ、羽ばたかせた経緯をお聞きしました。

一度は断ろうとしたアニメ化。そのアニメ化を決めた条件

――立石さんと『四月は君の嘘』の関わり方をお教えください。

最初は僕のところに、斎藤さん(俊輔/アニプレックスプロデューサー)が「『四月は君の嘘』のアニメ化をしたい」と持ち込んできたんです。何年前になるかな、3年前位になるかもしれません。僕は、講談社の作品における映像化の窓口を担当しているので、そこで2人で「どういうかたちで映像化しましょうか」と相談したんですね。

――その時点で斎藤さんとはアニメ化のお仕事をしていたんですか。

別件で一度お会いしたことはあったんですが、作品でごいっしょしたことはなかったんです。だから、今回が初めてです。

――アニメ化のお話が来たときは、どんな印象をお持ちでしたか。

最初に斎藤さんが話をしたときは放送期間が1クール(全11話)の企画だったんです。それで一度お断りをしているんですよね。当時はまだ単行本が2巻とか3巻だったので、まだどういう結末を迎えるのかわからない。結末を新川先生や編集部に聞いたときに、アナザーエンドはありえないだろうと。あるいは、アニメが先に結末を描いてしまうのもナイ。途中で切ってしまうことも、この作品としてはないだろうと。最後までアニメでやることができないのなら、「アニプレックスさんと組むことはないだろう」という話もしました。

――結末までアニメ化するということが条件だったんですね。

そうですね。その後に斎藤さんが調整してくださって放送期間が2クール(全22話)になり、制作体制が整ったところで、じゃあ原作の結末ととアニメの放送の最後をそろえようかと。放送時期を調整したという流れです。そこからは先生の連載のタイミングをみんなと相談しながらあわせていきました。

――今回はアニプレックスの斎藤さん側から働きかけがあったそうですが、一般的にアニメ化するときはどんな過程を取るのでしょうか。

いまの僕らとしては、基本的にうち(講談社)からアニメ化の企画を関係各社に持ちかけるスタンスなんです。僕らがやりたい映像化の方向性に、いっしょに乗ってくれるパートナーを探しているということになります。ただ、これはおもしろいことでもあるんですが、僕らがアニメ化したいなと考えている作品は、外部の方もアニメ化したいと考えているんですよね。『四月は君の嘘』もそろそろだね、と言っているときに、斎藤さんからお話をいただいたので。もし、アニプレックスができないとなっても、もしかしたら別のかたちでアニメ化されていたかもしれません。ただ、斎藤さんたちは本当に作品愛があったので安心してお任せすることができました。

プロデューサーは誰よりも早くスタートを切り、
ゴールを迎える仕事

――アニメ化を決めたあと、どんなお仕事をされたのでしょうか。

僕らが深く関わるのはオンエアが始まる前までなんです。基本的には委員会の構成を考える、そしてスタッフを決めることになります。ホン読み(脚本打ち合わせ)やアフレコがはじまると、僕らは一度肩の荷が下りたような気持ちになるんですね。だから放送の1年くらい前に僕らは、この仕事が一段落したという気分を味わっているんです。まずはスタートして良かったなと。そこでバタバタしているとロクなことがありませんね(笑)。

――なるほど、ではスタッフ面についてはどうお考えでしたか。とくに今回監督を務めるイシグロ監督は、本作が初監督ですよね。

最初にキャラクターデザインの愛敬由紀子さんのお名前があがったんです。愛敬さんについてはそのお名前も絵の評判も存じていたのでこれはイケる、と思っていたんですが……。監督の名前が全然わからなくて(笑)。「イシグロ……誰だ!?」ってところからはじまりましたね。でも、斎藤さんが「『放浪息子』の第7話がすごくよかった」と話をしていたんで、僕も「放浪息子」を観て。良い演出をされていたので、これはイケるかなと。ただ、ここは賭けですね。原作がしっかりしていることもあったし、斎藤さんとA-1 Picturesが任せてみたい監督だとすれば、こちらも信じようと。かなり早い段階で、イシグロ監督、キャラクターデザインが愛敬さん、シリーズ構成が吉岡たかをさん、アニメーション制作はA-1 Picturesというのは決まりました。

――次に、アニメの方向性についてはどのような話をしていましたか。

僕らプロデューサーはビジネスの座組みを組み立てることからはじめるんですが、斎藤さんはお金の話をする前に「このあとのストーリーはどうなるんですか!」と作品の話を先にしてる人だったので、中身については彼におまかせしていいだろうと。僕はこの作品は原作通り、きっちりアニメ化をするしかないと思っていたので「うまく原作を再現できるといいな」と。斎藤さんを信頼していましたね。

――原作側としてアニメスタッフにお話したことはありましたか?

もちろん先生や編集部の意見は伝えていますが、こちらから付け加えたことは今回に関してはほぼなかったですね。イシグロ監督をはじめシリーズ構成・脚本の吉岡たかをさんも作品に対して、すごく理解度が深かったので、僕らが口出しをすることはあまりなかったです。

若いスタッフによる意気込みが作品を勢いづける

――プロデュース側としては、出資する関係各社で製作委員会を結成することになると思いますが、『四月は君の嘘』の製作委員会の特徴は何かありますか?

ほかの製作委員会との違いははっきりとありますね。ひとつは若いことですね。あと、みんな「四月は君の嘘」が大好きすぎる(笑)。

――そうなんですね。

好きだし、若いから、何でもかんでもやろうとする、っていう。本来『四月は君の嘘』は多角展開に向いている作品じゃないと思うんです。商品化にしても、コラボレーション展開にしてもなかなか難しい。たとえばキャラクターがたくさんいたり、コアターゲット向けのアニメだったりすると、そういう展開もやりやすいんだけど、『四月は君の嘘』は本当に普通の中学生たちのドラマなので。だけど、これだけ大きな作品にできたのは、そういったスタッフの意気込みに支えられたんだなと。作品的に幸せだったと思います。

――この作品がおもしろいものになりそうだと、手ごたえを感じた思ったときはいつでしたか?

実は最初のアニプレックスからの提案ではアニメーションプロデューサーが福島祐一さんではなかったんですよ。A-1 Pictures内で企画の情報共有がなされた際、福島さがこの作品に興味をもってくれて、手をあげてくれたんですよね。その情報を斎藤さんからもらったとき、福島さんのこれまで制作してきた作品の素晴らしさも含めて、これは「面白いものになるかも!」という実感がありました。監督とのコミュニケーションの取り方とか、好きな作品は絶対になんとかするという気概があるんですよね。もちろんどの作品も全部気合が入っていると思うんですが、どうしても制作していると現場がキツくなるんですよね。この作品は制作期間もわりと余裕がありましたし、福島さんのようなプロデューサーがいるならばそれも乗り切れるだろうかと。今、放送されているものを見ると福島さんしかプロデュースできない作品だなと本当に思います。

――じゃあ映像をご覧になる前から、手ごたえはあったんですね。

ありましたね。ただ実際に映像を拝見したときに、その予想の上を行っていましたね。ただ、これがどこまで続くのかなという不安はありましたけど。それも第5話の映像ができあがったときに大丈夫だな、と思いました。個人的には『進撃の巨人』をアニメ化したときと似ているなと感じたんです。アニメの力で原作の作品力もぐんぐんあがっていく。実際コミックスも非常によく売れています。放送が完結してから、あらためて話題になるタイプの作品だと思っていますので、今後も末永く楽しんでいただければうれしいです。

――長い間支持される作品になりそうですね。

そうですね。原作も完結しましたが、アニメが最終回を迎えても、長く楽しんで欲しいですね。

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